クッキングハウスからこんにちは No.100号

目次(青字の記事を抜粋してあります)2005年2月14日発行

クッキングハウスからこんにちは100号記念…1、地方講演旅日記…2、三ヶ所の活動の様子・みんなにとってのクッキングハウス…4、いい本が出ました1…7、いい本が出ました2…7、笠木透さんコンサート…8、きれいになる気功…8、水野スウさん出前紅茶…9、イベントのお知らせ…11、講演スケジュール…11、各地からありがとう…12
お休みのお知らせ…12

地方講演旅日記 〜友達の国、ベトナムにスケッチの旅〜

ベトナムは私の青春時代からの憧れの国。友達になりたいと思い続けた国です。学生時代ベトナム戦争の激しい時で、アメリカはベトナムの村々を焼き、村人をたくさん殺し続け、枯葉剤をまいていました。

夜学生の私は、夜の街を「アメリカはベトナムから出ていけ」とシュプレヒコールしながら、仲間達とデモ行進しました。水田を耕し続けながら、敵機を撃ち、悠然と木陰で学んでいるベトナムの女性達の映画を見て、しなやかな、しかし不屈の精神のベトナム女性に感動したからです。世界中の市民、若者達が応援しました。

1975年、ベトナムは、とうとう、飢えずに勝利し、南北の統一を果たしたのです。自由と自立への願いは、たゆまず実践し続けたら必ず叶うのだと、大きな希望をもらったのです。
 そして年月は流れ、2002年。夫、正行(セーヤン)退職記念の旅に憧れ続けてきたベトナムに旅することができました。

Haさんという優秀な女性が、国営放送局の仕事を休んで私達の個人ガイドをしてくれました。
 ハノイの孤児達の施設や、枯葉剤で障害児になった子ども達のリハビリテーションセンターを訪ね交流しました。(続・不思議なレストランにその時の様子を書きました。)

ベトナムの人達が国を復興させるために懸命に働いている様子、と同時に戦争の傷跡が30年近くたっても残っていることを見てきました。

そして、2回目のベトナム旅行は、2004年12月25日から、元旦までの一週間。キミコ方式の仲間達とスケッチツアーにハノイ、フエ、ホイアンを訪ねました。毎年、世界遺産を訪ねるスケッチツアーに参加していて、一年に一回会えるキミコ方式の仲間も増えました。

インド、ニューカレドニア、スペイン、バリ島、ベルギー、ネパール、いつも、セーヤンが一緒で、いつの間にか熱心にスケッチする人になっていました。

でも、今回のベトナムにはセーヤンはいませんでした。仲間のみなさんが、フエのレストランの夕食会で、思い出を一言ずつ語ってくれました。私にとっては、何よりも、心をいやしてくれるプレゼントでした。いただいたバラの花束は滞在中ずっと私の枕元にありました。

亡くなって初めてセーヤンの夢をみました。「私がみんなとパーティを終えてホテルの部屋に戻ると、にっこり笑った無言のままのセーヤンが待っていて、部屋は船の操縦室になっていて、私がドアをしめた途端、部屋は船になってセーヤンの操縦で出航した。」という夢でした。

フエを去る時の午後4時、雨のフォン川にバラの花束を流しました。キミ子さんが、「さよなら」と言いましょう、と私に語りかけました。セーヤンはみんなとの楽しい思い出に感謝しながら淡々と、ひょうひょうと去っていきました。フォン川は大河となって海に流れこむでしょう。

古都のフエの市場で、天秤棒をおろして道端で野菜を売るおばあちゃんのそばで半日、スケッチしました。言葉は通じないけど、おばあちゃんはにこにこして私のスケッチを見ています。ナス1個、キューリ1本、トマト1ケ、香草2〜3本という風に、今料理する分だけをお客が買いに来て、昼にはザルの中の野菜はからっぽ。おばあちゃんは、天秤棒にザルを重ねて、いかりをのせ、ひょいと肩にかけると、にっこりと帰っていきました。

なんとも悠然とした働く姿に、心にじわっと火が灯りました。年をとったら、あんな柔和な顔のおばあちゃんになりたいものです。

かつて、15〜6世紀、朱印船貿易をしていた頃の日本人街がそっくり世界遺産の街になっているホイアン(ベトナム中部、ダナンの少し先)は、なつかしさがこみあげてくるような古いいい街でした。1639年の江戸幕府の鎖国命令で日本人は引き揚げたのだそうです。ここで、ゆっくりベトナムコーヒーを、コンデンスミルクをたっぷり入れて飲むと、はるかな昔の人になった感じがします。

やっぱり日本とベトナムは友だちの国だったのです。これから、豊かな文化交流をしていけたらどんなにいいでしょう。(松浦幸子)

いい本ができました -1「統合失調症を生きる」

待望の本が2005年1月26日に出版されました。執筆者は11名。当事者、家族、地域でサポートする人、精神科医、番組制作スタッフの方々で、みなさんが、思いを込めて、力作を書いています。

2004年2月3日、17日、24日の3回にわたりNHK総合テレビ「生活ほっとモーニング」で1回75分「無理解をなくそう統合失調症」が放送されました。放送が始まってすぐにひっきりなしの電話、FAXが途切れることなく1700件以上になりました。しかも、病気と付き合いながら暮らす当事者への共感、NHK総合テレビで正面から番組として向き合い取り上げたことの評価、再放送の希望でした。

この番組に、クッキングハウスの活動が紹介され、レストランや、SSTの場面、メール便の仕事をするメンバー達が、自然に、明るく映し出されました。

松浦も2回目は前田ケイ先生と、3回目は、精神科医の伊藤順一郎先生、大阪人権センターの山本深雪さんと出演しました。

「いい番組でした。これから病気と付き合っていくための希望をもらいました。」「隠さないでいいのだと心が晴れました。」「丁寧に製作してあり、よくわかりました。」と喜びと感動の電話、手紙、こんなにいい居場所があったのかと、直接訪ねてくる人、心の相談に訪れる人と大変な反響をいただきました。

小さな居場所だけど、街の中で、人間らしく当たり前に暮らしていくことをやり続け「おいしいね」から、あったかく、元気な文化を発信し続けていることが私達の笑顔から伝わったことは嬉しいことです。メンバー達も肯定的な反響をいただき、更に明るくなり、自分に誇りをもって生活できるようになりました。

無理解をなくし、地域で当たり前に暮らしながら治せる仕組みをつくるために、番組での話を更に掘り下げて、それぞれが体験や今の取り組みを書きました。

松浦もクッキングハウスの心の居場所としての取り組みを、「あなたをひとりぼっちにさせない」というタイトルで書きました。メンバーのやさしい笑顔が浮かぶようでほっとすることでしょう。ぜひとも読んでいただきたいのです。

NHK出版 1600円+税
クッキングハウスで注文、購入できます。
0424−84−4103 事務局

いい本ができました-2「ソーシャルワークにおけるSSTの方法」
北川清一・相澤譲治・久保美紀編 福島喜代子著 相川書房

いつものように大勢の旅です。今回はご家族の方4名も一緒なので、大世帯の家族旅行のようでもあります。

毎月一回、クッキングハウスにメンバーのカウンセリングに来て下さる、ルーテル学院大学の福島喜代子先生の本です。「ソーシャルワークを行う人がSSTの技術を身につけ、援助するときの選択肢の一つにして欲しい。」との願いからわかりやすくSSTを学べる本です。価格も1000円(税別)とお求めやすくなっています。クッキングハウスにもおいていますので、お声をかけてください。

クッキングハウスに吹いた素敵な風
水野スウさん〜金沢から出前『紅茶の時間』〜

『紅茶の時間』の水野スウさんが、ティールームに講演に来て下さいました!!と言っても、私はその日まで、水野スウさんのことを全く知らなかったのですが・・・。

講演会を始める前にまず自己紹介。メンバーとスタッフが「私にとってのクッキングハウス」というテーマで一言ずつ話しましたが、後から後からメンバーたちが来て、自己紹介だけで30分以上かかってしまいました。

そして、ようやく水野スウさんの講演会が始まりました。赤ちゃんのことが全くわからなくて、育児仲間がほしくて自宅でオープンハウス『紅茶の時間』を始めたこと。『紅茶』はあんまりはやっていない、無料の喫茶店みたいなところだということ。「安心して自分のことが話せる・聴いてもらえる」と口コミで伝わり、色々な人が来るようになって、『困ったさん』も来たかも知れないけれど、一人でかかえこまないで『紅茶』という場全体で受けとめたから、『困ったこと』は、一度もなかったこと。

専門家でないということが、かえって良かったこと。みんなが私に「してもらっている」と言うけれど、本当は私の方が『紅茶』に来る人達から沢山沢山「してもらっている」ということなどを、上品な穏やかな口調でお話して下さり、私は、水野スウさんがすっかり好きになってしまいました。講演会の後、今度はお客様に自己紹介をしていただきました。 その中に、病気の娘さんと一緒にきたお母さんがいました。そのお母さんは、涙で言葉がつまってしまい、なかなかお話ができません。そして涙を流しながら、きっと初めてなのでしょうつらい胸の内を語って下さいました。

「泣いたっていいんだよ」「泣けて良かったね」「やっとつらい気持ちを吐き出すことができたね」メンバー・スタッフ・お客様みんなの心が、そのお母さんのつらい心に寄り添いました。これってクッキングハウスという『場』の持つ力ですよね。

今日水野スウさんの講演会を共にしたことで、メンバー・スタッフの心の中に、温かい素敵な風が吹きました。そして、それは、参加できなかったメンバーにも必ず伝わっていく。明日から、クッキングハウスを訪ねて下さるお客様にも必ず伝わって、お客様が自分の家や地域に持って帰って、その風はそよそよと広がっていくことでしょう。クッキングハウスは、そういう『場』だと思います。(なつこ)


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