クッキングハウスからこんにちは No.111

目次(青字の記事を抜粋してあります)2006年12月12日発行

目次
巻頭言 君は君の主人公だから・目次…1、20周年に向けてうたをつくろう・・・2、
ピースなレポート…3〜4、 動くクッキングハウス 尾張一宮・八丈島…4〜6、
レポート 平和村キャンプとコンサート・作品展・メンタルヘルス・バレーバール大会・リハ学会SST学術集会・・・6〜9、
イベント・文化学習企画 うたづくり教室・父親教室・・・9〜10、松浦幸子講演スケジュール・各地からありがとう・お知らせ…11〜12


〜20周年に向けてうたをつくろう〜    

 2007年11月10日(土)は、20周年を祝う会を調布駅南口のグリーンホール(800名)で行うことが決定。15周年を祝う会コンサート(2002年12月)では、CDブックスが完成し、舞台でみんなが作ったうた「君はひとりぼっちじゃない」「八丈富士」「ぼくの大冒険」を大きな声で泣きながらうたった。笠木透さんがプレゼントしてくれた「不思議なレストラン」は悲しい時、嬉しいとき、歓迎する時などにうたい、今ではすっかり私達のうたになっている。

 20周年を祝う会でも、新しい自分たちのうたをつくり、披露できたらいい。そして、うたっているうちに心を洗いだし、元気になっていくような、みんなの気持ちがひとつになるようなうたがつくれたら、どんなにいいだろう。

 とにかく、この言葉は大事だというそれぞれのキーワードを出し合ってみた。例えば、「いつでも安心して戻ってこられる」「だから今出発しよう」「ここに私たちの今がある ここに私たちの未来がある」「笑いがあるからリフレッシュ」「凍りついてコチコチの心が ゆっくりじわっと溶ける」「心優しい仲間たち」「今日もここに来て元気が出たよ ありがとう」「みんな歩いていこう」・・・石島さんも早速「宝物」というレストランのうたを書いてきてくれた。

 そして、11月18日(土)には、笠木透さんと増田康記さんにうたづくりに向けたコンサートをしていただいた。府中ユネスコクラブの国際交流イベントに集まったみなさんや、寺子屋の方たちも一緒で立見の満員御礼となった。

 笠木さんの話
「うたをつくるのは、共通の思いをみんなで作ることだから一人で作ってはダメ。一人で作っても、みんなでできることを残しておくことだ。すべてテレビを見てわかったような気がしている時代。心は貧しくなってきた。違う人間を許せなくなって戦争になったり、差別がなくならないからうたをつくるのだ。下手でもいい。かっこ悪くてもいい。隠してかっこよく書いても、ちっとも心に伝わってこない。本音で書けばいい。そのためには、よく見ることだ。観察すること、印象に残ったことを心にしまいこんでおくこと、そして心で想像すること。余白や未知のところが大事。よく観察してからぼかすこと。観察とは、人を見ることだけでなく自分をよく見ることだ。自分にできないことをやってくれる人。人を大事にできるようになる。人に協力することができるようになる。」

 こんな話を織り込みながら、「筑後川」や「私はなんのために生きているの」や「生きてゆこうよ」をうたってくれた。早速、池田明弘さんが「外来通院に行って、笠木さんが言っていたようによく観察して“外来のうた”を作ってきたよ」ともって来てくれた。高尾山ハイキングでの頂上の昼食会で披露。外来通院は、根気のいる大事な仕事。メンバー達は、愚痴も言わずきちんと通院し続けている。たくさん待たされ2〜3分の面接なのだ。池田さんのうたにみんな共感できた。

 こんなうた作りの話を聞いて、作曲家の岡田京子さんが、みんなで曲を付けていくことを教えて下さることになった。誰でも曲を付けられる方法があるのだという。「みんなが気持ちをひとつになれるような詩を作ってみてね。それに合わせて曲を付けていきましょう。」と関心をもって下さったのだ。なんと嬉しいことでしょう。みなさん、ぜひお出かけ下さい。クッキングハウスへの思いを少しでも書いて、持ち寄っていただければありがたいです。(松浦幸子)


<ピースなレポート>
文化座と共にカナダの旅 (ブライス バンクーバー)
  「憲法9条は世界中の宝」(後編)

<ジャパニーズフェスティバル 日本をよろしく 憲法9条>
 トロントから5時間、バンクーバーにやって来た。ジャパニーズフェスティバルに参加し、ジャパニーズカナディアンの方々と交流したいと、文化座もごぜ三味線を披露することになった。カナダに移民した人達は漁師が多く、大変な苦労をした歴史をもつ。爪に火を灯すようにして働きやっと手に入れた漁船を、日本軍のスパイと疑われ没収されてしまった。戦後を経て三世の時代になり、ようやく苦難の移民時代を表現するようになったと、吉原豊司さんが教えてくれた。本当に知らないことが多すぎる自分を恥じた。

 パウエルストリートは、日本人の移民がたくさん住み、助け合って暮らしていたところ。公園でのジャパニーズフェスティバルは、町内会の祭りのような感じ。幕の内弁当、いなり寿司、だんご、焼き鳥、とうもろこしなどの日本の祭りと同じ屋台が出ている。公園のステージでのごぜ三味線を、お年寄りの移民の方達が弁当を食べながら懐かしそうに聴いてくれた。

 移民の人達が9条の会を作り活動していた。ちょうど日本語学校の中で広島の原爆展をやっており、会場に入ると真中のテーブルで鶴を折りながら参加者と交流している。私も鶴を折りながら、カナダ在住の日本人がどんな風に暮らしているのか語り合った。日本の私達もめったに鶴を折ったりしないのに、遠いカナダから広島のことを思い、鶴を折ってくれている。離れている故郷・日本のことをこんなに大事に思っていてくれる。

 ファイヤーホールでは、カナダ在住の芝居グループ「だいこんの会」のメンバーが新美南吉の童話「ごんぎつね」を上演。私達がもう歌わなくなった浦島太郎や桃太郎の童謡が流れ、日本のかつての農村風景が舞台にあった。丁寧に、日本語を味わうように語っている。日本の文化をとても大切にしている人達がここにいる。

 帰りのバスの中で、カナダに住んで30年になるという日本人の運転手さんが、「文化座のごぜ三味線を聴き、ごぜさんが芸を磨きながら自立した生活をし、一緒に助け合って生きていた、かつてそんな日本人がいたことに深く感動しました。みなさん、憲法9条のこと、日本のことをよろしく頼みます。」と挨拶された。憲法9条は、日本の国のことだけではないのだ。憲法9条は、日本人が世界中で信用されて暮らすために、どうしても必要なのだ。異国で暮らす人にとって、故郷である日本に誇りを持てることがアイデンティティの確立なのだ。

 カナダに来て、移民の人達が日本の文化を大切に後世に伝えようとしている姿に触れて気がついた。こんな出会いの旅を作って下さった吉原豊司さんに心から感謝します。(松浦幸子)


日本精神障害者リハビリテーション学会報告
    〜絵を描いてリカバリー 市民との開かれた交流の場として学会発表〜

 11月24〜25日富山市で「第14回日本精神障害者リハビリテーション学会」にメンバー・スタッフ6名で参加しました。毎年「リハ学会」と呼んで、参加し続けているこの学会は、医療・保健・福祉分野、当事者など、精神障害を持つ人のリハビリテーションに関わるすべての人が参加できる幅の広い学会です。

 今年は富山の実行委員の方々がこの機会に当事者の会を立ち上げ、また「富山大会宣言」を発表し、当事者が精神の障害を抱えても当たり前の生活ができるようにリハビリテーションを進めていくことを宣言しました。

 私たちの発表は2日目。演題は「絵を描いてリカバリー」です。毎月一回やっている「キミ子方式で絵を描こう」のプログラムが、市民やメンバーにとってどのような効果をもたらしているか、松浦さんとメンバーの斉藤さんが発表しました。まずは松浦さんから、キミ子方式とは?描く絵の種類など、会場のみなさんに知ってもらうために40枚の絵をみてもらいながら説明しました。参加者のかたに手伝ってもらい絵を並べると、会場がパッと明るくなりました。

 次は、今回の発表のためにキミ子方式に参加している市民やメンバーのアンケート結果の報告です。絵を描くことで自分の新しい可能性を発見し、交流を楽しんでいること、さらにこのような地域の居場所の必要性を感じてくれたことが、かなり高い数値で表れたことを発表できました。

 最後はメンバーの斉藤さんです。自分が絵を描くのが好きでつらい時も支えだったこと。クッキングハウスのキミ子方式のプログラムに出会い、水彩画が上手になりたい思いで参加したこと。最初は絵を描くことで精一杯だったが、徐々に人の絵にも目がいくようになり、いつも来る人と会話を楽しめるようになったこと。このプログラムが絵を描くだけでなく、コミュニケーションの練習になっていることに気づいたと発表しました。斉藤さんが、リカバリーにつながった実体験を話してくれたことで、アンケート結果からわかったキミ子方式の効果をより具体的に伝えることができ、とても温かな発表ができました。(林由佳里)

SST学術集会in名古屋 
〜一緒に発表・これからも共に学んでいこう〜

 12月1〜2日の名古屋での学術集会に6名で参加しました。大会初日の一般演題で松浦さんが「ひきこもり体験を持つ青年のリカバリー過程でSSTの果たした役割〜成長に合わせてSSTの練習課題も変化〜」で、斉藤さんの成長の過程とSSTでの練習の変化を第一期〜第五期に分けて発表しました。普段のSSTの様子もパワーポイントの写真で伝えました。

 斉藤さんは、クッキングスターのSSTでの4年半の歩みを伝えました。自分の体験を堂々と語り、立ち見のでる満員の会場で聴き入っている人達は真剣そのもの。当事者が自ら語るということに意味があり、他では聞く事が出来ない内容の濃い発表になりました。発表が終わってから、私たちのところへ来て直接感想や励ましの言葉をかけてくれる方も多く、嬉しくなりました。クッキングハウスのSSTが、質の高いものであることもわかりました。

 私は、今回が初めての参加でした。大会での発表という貴重な場で、様々な視点から学ぶことができ、SSTを積み重ねていくことの大切さを実感しました。(原村真子)

<斉藤さんの発表原稿より>
 学術集会での発表を通して、今までの自分と回復して来た自分、SSTを通じて希望が見えて来たことを改めて確かめることが出来ました。

 僕は、小さい頃からのいじめられた経験、人に対する恐怖と不信で、高校卒業後にひきこもるようになりました。数年間、会話らしい会話もなく、ただ泣いている日々もありました。

 そんな時にクッキングハウスに出会い、SSTというコミュニケーションの練習があることを初めて知りました。当時は、めまいや吐き気を覚えたりする程人間関係を苦しいと感じていたので、はじめはSSTが辛かったです。でも、参加するうちに練習したいことが出て来て、松浦さんとの個別相談でも「出してみたら?」と言ってもらい、SSTでも受け入れてもらえたので、初めて「挨拶の練習」の課題を出すことが出来ました。練習後には少しずつ気が楽になり、自分の気持ちを伝えるための大きな第一歩になったと思います。気持ちを伝えることで相談したりするようになり、悩み等を話し合う友人も出来ました。

 人間関係になじんでゆくのは今でもむずかしく、辛いことも多い日々ですが、SSTに参加することでヒントをもらい、実際に練習もしながら、少しずつ勉強・解決してゆく日々だと感じています。
 最近、真剣に自立を考えるようになり、家族にも伝えました。自立は遥か遠い目標だと思っていたのですが、ここまで前向きに、真剣に考えることが出来るのはとても嬉しいです。


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