クッキングハウスからこんにちは No.136

目次(青字の記事を抜粋してあります)2011年2月04日発行

目次
巻頭言:日本は幸福ですか・目次…1、さんねん峠が大好評…2、うたづくり…2〜3、10大ニュース…3、旅レポート…4、メンタルヘルス市民大学…5、父親学習会…6〜7、文化学習企画:講演スケジュール、イベント情報等・・・9〜12、各地からありがとう他・・・12

〈旅・スペシャルレポート〉ニュージーランド 
スケッチ旅行

日本が冬の時、南半球のニュージーランドは真夏だときいて、夏服、ユカタや水着をもって出かけたところ、とても寒い。ここは南極に近い島。南極から強い風が吹いてきて、一日のうちで四季の変化がある位に気温が変わる。現地に行ってみないとわからないことが多いものだ。
420万人の人口に羊の数が10倍という。のんびりと草を食べる羊の牧場がどこまでも広がる。牛もいっぱいいる。なんと食料自給率は100%を越えている豊かな農業国。戦車もなく、救急用のヘリコプターがあるだけだという治安のいい国。人々は平屋の大きな家と広い庭に花をいっぱい咲かせてゆったりと暮らしている。なんと日本の若者がレストランや店やホテル、ガイドとしていっぱい働いていた。
オークランドから車で4時間。ウィテアンガという海辺の町にある、キミ子方式のの発案者松本キミ子さんの別荘に滞在。  
毎日、海の潮が引く頃、ムール貝をとりに行く。環境を大事にする国なので一人一日25コまでという決まりがある。最初は岩という岩を必死に手さぐりして探していたが、段々感覚がつかめてきて、波の揺れるのにじっと目をこらしていると、ふっとムール貝が岩に見え隠れするのを見つかられるようになった。ムール貝と隠れんぼして遊んでいるように楽しくなる。毎日ムール貝とりをしていると雑念はすっかり去り、体中から生きるエネルギーが湧いてくる感じ。人間が狩をしたり、食べるものを探しながら子どもを育てて生きてきた、

たくましくおおらかな原始のエネルギーが自分にもあると感じられたのだ。
朝は、80歳の素敵な女性、キャシーさん(キミ子さんの別荘に住んでくれている人)に、太極拳に連れていってもらう。同好会の市民はみんなフレンドリーに迎えてくれる。自立して健康に生きることを大事にしている人達の仲間に加えてもらえて嬉しい。旅の緊張もほぐれ、ゆっくりした呼吸で体を動かすことを楽しんだ。別れの日、“よい旅を”と即席で覚えた日本語で見送ってくれた。

海と空、海でひろった貝、花々をスケッチする毎日。なんて美しいんだろうと夢中で描いたのは、ニュージーランドの夏の花、紫色のジャカランタの花の木だ。公園や家々の庭に大きなジャカランタの木があり、ハンモックがつるしてあったりする。夏の青い空にジャカランタの紫色がなんと似合うことだろう。日曜市の公園で夢中で描いていると、人々がにっこりのぞいて“ラブリィ”というやさしい言葉をかけてくれる。
旅の楽しみはやっぱり食事。10人の仲間達でおいしい食事をつくって食べる。私は初日から“クック船長”と呼ばれ、みんなの食事の献立に励む。ムール貝はいつも食事を飾る。手巻き寿司も日本のカレーライスも野菜いっぱいのミートソースもキャシーさんが“グッド”とウインクして喜んで食べてくれた。世界中どこに暮らしても、私は一緒になった仲間と“おいしいね”から元気になれる場クッキングハウスをやっているだろうと実感した。(松浦幸子)


〈当事者研究にたどりつけた メンタルヘルス市民大学〉
第一期生終了〜おめでとうございます〜

メンタルヘルス市民講座を10年続けた節目に、更にコミュニケーションの学びを深めていきたいと思うようになりました。講座に参加のみなさんも、もっとメンタルヘルスのことを学んでいきたいと共通の思いでいることがわかり、2010年6月、小谷村での一泊市民大学開講。12月11日で7回の講座終了。のべ154人の参加者。全回終了者は10名に修了証とごほうびを渡すことができました。
メンバー達も熱心に学んでくれました。そして勇気を出して当事者研究を発表し、これからの学びへの道を開いてくれました。参加者みんながどんなに多くの勇気をもらったことでしょう。
約束のごほうび企画は冬の小谷村一泊で、雪の中で暮らす村の人達と語り合います。元気になれるSSTで学びあい、カモミールのみなさん、共働学舎のみなさんと交流します。
おそらく日本でもっとも小さな大学かもしれません。市民が学ぶことは、デンマークのホルケホイスコ―レで伝統があります。人生の途中で学びたい動機が高まった時に入れる学校です。学歴や資格をくれるところではありません。自分の人生のための学校なのです。
クッキングハウスからスタートした市民大学も、人生の途中で生きづらさを抱えた時、もっといい人間関係のとり方を学び合え、新しい生き方への希望が持てるあたたかな学び舎にしていきたいと思います。


感想から
【市民大学で感動したこと】
☆何といっても小谷村です。当事者や家族がなかなか参加できない事情の中、地道な啓発活動を続け、学ぶチャンスをセッティングして下さった高橋きよみさんに感動しました。
☆当事者研究です。病気をしたことの大変さ、絶望感の混乱の中を生き続けてきたメンバー達。クッキングハウスと出会い、自分自身を取り戻し、生きる希望を取り戻してきたのですね。人が生きることの輝きを伝えてもらいました。
☆ユーモアのある発表や客観的な発表など当事者研究を聞いて、自分の体験をオープンにすることで、大変な中を通って今があることを共有できることの素晴しさを感じました。
☆みんなで学ぶことは豊かなものであること、心の栄養になることだと実感できました。ここでの学びの時間は、自分に焦点を当ててあげられることで心の安らぎを得た。
☆市民大学に参加しまず感じたことは、よいコミュニケーションの気持良さです。相手の良いところを見つけて「私メッセージ」で伝えることで、人間関係がうまくいくだろうということも希望になりました。当事者研究では辛い体験を乗りこえ、明るい未来のために良いコミュニケーションを学びたい思いを伝えることができました。
☆一生勉強、一生青春。今の年になっても勉強することができるのだという感動と喜びです。
☆今、世界中の人が必要としていることは、コミュニケーションを豊かにして、暴力的ではなく対話でわかりあっていくこと。本当に必要なことを、学びたいと思った時に学べる市民大学がいい。
 これから学びたいことの希望もたくさんあがりました。不安との付き合い方、対人関係での緊張、セルフコントロール、回復へのコツ、コミュニケーションの学び、マイナスな考えがでてきた時の対処、子どもに振り回されない適切な距離のとり方、脳科学、発達心理学、死生学・・・
その中でもトップは「当事者研究」です。第2期のメンタルヘルス市民大学(6月開講)をどうぞお楽しみに。(松浦幸子)

2011年 新春の学び  父親学習会
“安心を贈ること” “夫婦のコミュニケーション”


 遠くは群馬県や栃木県からもお父さん達が来て下さり、19名の参加。ずっとこの日を待っていたと午前中に到着されたお父さんには、「見て学ぶSST」や「統合失調症最前線」 「名医にQ」などのビデオを見てもらう。
 今回のプログラムは昼食交流会からスタート。豚肉の梅酒煮と江田さんのお父さんからのたっぷりヤサイ。前島さんの切り干し大根のごま和え、けんちん汁の夕べから仕込んだ手作り料理。あっという間の早さでお父さん達が食べるのでびっくり。

 増野先生のお話は、「当事者はストレスに対して敏感なのだから安心を贈ることが大事。家族のE.E研究でも、家族が不安な感情を高めていくと再発が高くなり、安心なサインを送っていくと再発が低くなることがわかっている。
 当事者の不安が高まった時、助けてというサインがでる。その時キーパーソンである家族が、大丈夫だよ、と受け止めれば、危機を乗りこえて成長していける。しかし父親は、当事者に社会の圧力を送りがちになるから、安心を贈れるように学んでいこう」。
 一人一人のお父さんが今抱えている問題を話し、増野先生が適切なアドバイスをしていく。
どうしても夫婦のコミュニケーションの問題にいきつく。

 「父親が早く変わってくれなかったから子どもが回復しない、と妻に責められる。」というお父さんには、「4年半息子と暮らす年月の積み重ねがあったから治療につながったのですよ。必要なことだったのです。」とお父さんを肯定してこたえられるのでとてもほっとする。

 「子どもが病気になる前は、私にはいい妻だったのに、何をやっても、あなたが悪いと妻に怒られる。子どもは、夫婦が仲良くやってくれというのだが。」というお父さんに、先生は「夫婦の誰かが我慢していると、我慢のパターンができあがってしまうのです。そのパターンをやめて、やはり夫婦が話し合うことです。どちらが正しい正しくないということではないのです。互いの違いを分かり合うことが大事。父と母のけんかをなくするだけでも、当事者のストレスはなくなるのです。」

 夫婦の間で、当事者の病気をめぐってお互いが責任のなすり合いをしていては解決していかない。当事者に安心を贈ることにならないから。でも現実には、いかに夫婦の気持ちがこじれて悩んでいるかがよく伝わってくる。

 最もうれしかったことは、メンバーの一人がお父さんを誘ったことだった。実はお父さんも孤立して苦しんでいたことに気づき、参加費も彼がプレゼントして、お父さんと一緒に来てくれたのだ。
 初めて息子の通っている場に来てくれたお父さん。
 「息子がひきこもりだしても自分は何もしてやれなかった。夫婦の関係もよくなくて、ずっと自分も意地を張って思いやりをもてなかったまま20何年きてしまったが、もっとコミュニケーションをよくすればよくなるかもしれない。今までなぜこんなにムダな日々を送ってきてしまったのか。20周年を祝う会で息子が司会をしていた姿があまりにも立派になっていて、自分も頑張らなくてはと思った。」と語り、涙があふれてくる。
その思いをいただき、涙ぐむお父さんたち。
お父さん達の学びの会は、互いを支え合えるいいグループに成長していけるだろう、と希望がもてた。これからも続けていきたい。(松浦幸子)


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