クッキングハウスからこんにちは No.199
(記事の一部抜粋)

2021年8月2日発行

 
SSTでリカバリー

メンタルヘルス市民講座第4回で双極性障がいの経験を、メンバーの中島暁子さんが語ってくれました。中島さんはクッキングハウスに出会ってからもう15年が経ちます。最愛の夫を亡くした後、自分のペースでひとり暮らしを続け、クッキングハウスの仲間や市民活動の友人たちと交流し明るくやってきました。
3年程前に、双極性障がいは回復したねと言った頃、糖尿病の進行と背骨損傷で入院。医療を十分に受けられるように入院中に生活保護を申請しました。また、入院中に介護の認定も申請し、要支援2となり介護用ベッド、外出用のシルバーカー、リハビリ訪問看護、介護職員(ヘルパーさん)の家事援助とケアマネジャーの定期訪問と地域で一人で暮らしていくためのサポートを整え退院準備。体への負担をなくすために古いアパートの引越し。一階の角部屋で車椅子が使えて介護が出来るアパートが見つかり、クッキングハウスのスタッフや仲間のメンバー達が協力し、環境を整えようやく退院となりました。
ひきこもらずに街に出かけていけるように、リハビリのスタッフが付いてシルバーカーで街を歩く練習を丁寧にやって下さいました。クッキングスターの階段を登り下りする練習も何回も重ね(階段の一段ごとに両足を揃えて一歩踏み出すこと。焦って咄嗟に足を出さないこと)これで大丈夫になった時は拍手。根気よく教えて下さったリハビリのスタッフの皆さんにもお礼の拍手でした。これで、念願のSSTにも再び参加できるようになりました。

「私はかつて双極性障がいでした。ハイになるととても攻撃的になり、イライラして2人の子どもにも怒ってばかりで、家事もできない状態になりました。躁状態の激しさの例ですが、夫に離婚するから慰謝料ちょうだいと言ってピースボートに1ヶ月も乗ったこともありました。離婚はしなくてすみましたが、症状があまりにもひどくなって入院となりました。7回も入退院を繰り返した時、病院のソーシャルワーカーが『いつまでも入退院の繰り返しではいけないから地域の居場所を捜しましょう』と言い、クッキングハウスを紹介してくれました。クッキングハウスではSSTをやっており、私はSSTに毎回参加して自分の認知を改善することができて、もう大人になった娘達にも謝りたい気持ちになり、SSTで謝る練習をして娘達にちゃんと謝罪することが出来ました。私を嫌い離れていた娘達と、やっと仲直りが出来たのです。

また、夫が失業した時もSSTで練習し『焦らなくていいから少しゆっくり休みましょう』と伝えることが出来ました。それから一年半は夫と散歩したり、ゆっくりとした時間を持つことが出来たのです。再び働きだした夫は突然心臓発作で亡くなりましたが、あの時『ゆっくり休みましょう』と言えて2人の良い時間が持てて本当に良かったと思います。双極性障がいが治ったと思ったら糖尿病が悪くなり背骨も損傷して入院となりましたが、私の心は穏やかで一日一日が平和に過ごせればいいと思えるようになっていて、長い入院とリハビリも前向きに乗り切ることが出来ました。
〈中島さんのベッドのそばにはいつも仲間が見舞いに来ていて時には面会フロアーでグループで交流していました。いつも中島さんがニコニコとしているので、ホッとして皆が何度も会いに行きたくなったのです。(松浦 付記)〉

退院後、躁状態が出てきて人と何時間も喋っていたり、テレビのニュースを遅くまで見ていて睡眠時間が少なくなり、攻撃的状態になったことがありました。すぐに松浦さんが察知してくれて、夜遅いニュースを見ないで眠る事と生活を改善し、クリニックに同行して薬の調整をして、元の穏やかな状態に戻ることができました。
クッキングハウスがあったから私はこうして平和に暮らしています。亡き夫もクッキングハウスに出会えたことをとても喜び『ずっと通ってほしい』と言ってくれていました。今は市民活動も出来ています。誰も私が精神障がいだからと差別する人はいないし、対等に付き合えています。」
にっこりと語る中島暁子さんに参加者が皆、心からの喜びの拍手を送った。(松浦幸子)



7月の家族SST

家族に注意された時、気持ちを立て直すには
心の病気を体験した当事者は、どうしても人間関係に敏感になってしまいます。自信を無くしている上、否定的な言葉をかけられると、特に傷つきやすい状態になっています。
親には、こんな心の状態をわかってほしいし、受けとめてほしい。揺れる当事者を、大きな木になってどっしりと支えていてほしいと願っています。当事者自身があせっているし、将来への不安をいっぱい持っているから親には安心感をプレゼントしてほしいと切望しているのです。
不安からくるイライラから、親にはひどいことを言ってしまうのですが、それでも親には受けとめてほしいと、アンビバレンツな感情でいます。そんな自分自身を、ちょっと距離を置いて眺めてみましょう。仲間と一緒に眺めてみると、心強いものです。そこにこそ、学び合うことの意味があります。
そして、本当は家族と、どんな関係でいたいのか、どの位の感情の距離がちょうどいいのか、学びを深めていけたら、うれしいです
<ワーク>
① どんな言葉で、またはどんな態度で注意されたことがつらかったですか。
例:「働きなさい!」「親がいなくなったらどうするの? 自立できるの?」
② 本当は、どんな言葉を家族に言ってほしかったですか。または、どんな態度で接してほしかったですか。
例:「あせらないで、ゆっくりやっていきましょう」「サポートしてくれる人達を見つけよう」
③ あなたと家族との感情の距離は、どの位ですか。現在の距離をつくって、眺めてみましょう。どの位の距離だったら、お互いに楽で、いい関係でいられるでしょう。
④ 本当は、当事者は家族と、いい関係でいたいのです。さあ、気持ちを立て直しましょう。そして、新しい風を入れて家族と気楽な関係をつくっていきましょう。そのための具体的な方法を、経験から出し合いましょう。






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