クッキングハウスからこんにちは No.202
(記事の一部抜粋)

2022年2月7日発行

 
<レポート>  第12期 メンタルヘルス市民大学
『一緒に生きるための心優しい文化の創造』

第3回「荒野に希望の灯をともす」DVD上映会 2021.11.19

2019年12月4日に中村哲さんが亡くなられて2年を偲び、今日も満員御礼。みんなで食い入るようにDVDを観て、感想を語り合いました。
「真の人類共通の文化遺産は、平和と相互扶助の精神である。それは我々の心の中に築かれるべきものである」と、大かんばつに苦しむアフガニスタンの人々の命を救おうと用水路を引き、65万人もの人々を飢餓から解放し、農業ができる喜びと、家族と食事ができる平和をつくり続けました。そして今、大かんばつはもっと厳しい状況にあり、飢餓に直面している人々がこの冬を越せるだろうかと心配な中、中村哲さんの遺志を継いでPMSの現地活動は続き、日本ではペシャワール会の市民が支え続けています。
「寒風(かんぷう)の中で震え、飢えている者に必要なのは、弾丸ではありません。温かい食べ物と温かい慰めです」―中村哲―       (松浦幸子)

第4回 文化座80周年&佐々木愛さん舞台生活60周年の
記念DVDを観る―酒蔵のように守り続けたい― 2021.12.17

なんと、満員御礼の上映会となりました。文化座から制作部の国広さん、劇団員の小林悠記子さんも駆けつけて下さいました。「文化座のお芝居は、いつも生活している人に寄り添うことを大切にしてきました」という国広さんのお話に深くうなづきました。上映後のシェアリングも、一人ずつの感想を感動で聴きました。
「芝居をやる人は本音と建て前が変わらないということに感動しました」「二人ともどうしてあんなにやさしい言葉で話せるのか。文化を創っていく人に共通な言葉のやさしさと深さを感じました」「酒蔵のように止めてはいけないという愛さんのお話、クッキングハウスの居場所も共通ですね」「文化座のお芝居を観たことないが、松浦さんがこんなに大切に想っている劇団なら、私も行きたい」という方々がたくさんおられて、私は種まきの仕事ができたと思って嬉しかったです。                             (松浦幸子)
<参加者のアンケートより>
お芝居には、必ず人柄が出るというお話が印象的でした。劇団を、酒や醤油の蔵に例えてお話されているのを聴いて、1つのことを長くやり続けていくことの大変さ、大切さを感じ取ることができ、劇団にかかわる人たちと共に、今も成長し続けている姿に感銘を受けました。松浦さん、佐々木さん、お二人のやわらかいやり取りの中に、人生の深いものを感じた、いい対談でした。                                   (天野佳世子)
今ここのLiveであるという舞台の意義。効率が悪くても、そこでしか生まれないものがあるんだな、と。演じるということは自分を一旦、脇に置いて自分とはまったくちがう他者になってみる、ということ。何よりの他者理解じゃないかと。文化座の若い役者さんたちが過去の歴史を演じることの意義も感じました。そして、その役者さんが理解したこと、解釈したことを観客として見せてもらうこと。そこに共鳴して生まれるものがあるのだろうな、と。『命どぅ宝』を絶対に観に行こうと思いました。大切な松浦さんの、大切な文化座を知ることができてよかったです。                                     (中西万衣)
舞台人の話をじっくり聴いたのは、初めてでした。お二人、美しかった!!作り手側の苦労は並大抵のものではないなぁと、思いました。底を流れる人々の目線、思いを大切にした芝居作り、若手を育てる思い、すごいなぁという感想でいっぱいです。人間の生活に文化は大切。文化があるから、明日からの糧になっていくものですよね(憲法でも保障されているのに…「健康で文化的な~」と明記されている)。今までの文化座の芝居を観に行ったことがなかったので、これを機会に文化座のお芝居を観に行きたいです。今日は、11月の中村哲さん会から続けて来てよかったです。                (漆原万里子)
今日も素敵な一日でした。文化座の芝居、是非観てみたいです。愛さんは今、若い人を育てて未来に繋がる仕事をなさっているなぁと、思います。松浦さんも同じように未来に繋がる仕事だと思います。お二人の対談は気持ちよく、心にストンと落ちるいいお話でした。来年の目標は「文化座の芝居を観る」です。                    (渋谷文子)

第5回 松崎運之助さんのお話「心の散歩道」 2022.1.21
~心澄まして見れば、小さな幸せや感動が光っています~

市民、メンバー、スタッフ40名で会場はいっぱい。「大勢ですごいですね。しょうもない世の中をたたきなおそうという感じですね」と松崎さんはさっそく、ユーモラスに語りはじめてくれました。「松浦さんから『文化』というテーマが与えられました。私は、人が弱くなった時、つらくなった時、支えてくれるのが文化だと思っています」
長崎の川沿いのバラックで、母子4人で生き抜いてきたというご自身の体験や、夜間中学の生徒に長年寄り添ってきた中で培われてこられたからでしょうか、優しい口調で、小さな会場がしだいに穏やかな雰囲気に包み込まれていきました。
松崎さんが市民と続けている『路地裏』の活動は、30年。それを作るきっかけを作ったのが松浦さんと伺い、驚きました。路地裏の第1回目は西野博之さんが不登校の子どもたちの居場所『フリースペースたまりば』を始めるので、それを応援しようということで1991年4月に学習会を開き、その時の講師が松浦さんだったのです。
松崎さんのご著書「青春 夜間中学界隈」は山田洋次監督の映画「学校」にもなり、この映画を通じて夜間中学は世間に知られるようになったと言われています。文字が読めずに恥ずかしい思いをしたり、騙されたりして、文字が「敵」だったのが、夜間中学で文字を学び、自分のことを語り、人に伝えることができるようになったお話は、クッキングハウスでメンバーが居場所や仲間を得て安心していく中で、少しずつ自分自身を語れるようになっていく様子と重なり胸をうたれました。夜間中学は長く制度にない学校とされてきましたが、2016年『義務教育の機会確保に関する法律』ができ、今では不登校や海外からの子どもたちの学びの場になっているとのことでした。松崎さんは、昭和35年の子どもが労働している写真や、仕事の後に夜間中学で給食のコッペパンをおいしそうに食べる笑顔の写真等を紹介してくれました。「この子は、半分は家族のために持って帰ったのですよ。今は平和ボケをしてしまっていますが、忘れてはいけないことですね」
「私も夜学で学び、学びたいという気持ちを今もハングリーに持ち続けています。皆さんと学びたいとこのような企画を立てていますが、今日も皆で学べてうれしいです」と松浦さん。
「学校では皆が同じという前提なのに対して、夜間中学では皆が違うことが前提になっているのではと思いました。自分の言葉を見つけて、人の話を聞いて繋がっていく。学びの本質を学ぶことができました」(中西さん)
「生い立ちや教養には関係が無い、平等なことは、自分の気持ちを自分の言葉で話し、皆に聞いてもらう事というお話が一番印象に残りました。自分の気持ちを話せることはとても大事なことだと、この10年、思えばクッキングハウスで教わってきました」(平尾さん)
「学べることは、幸せなこと。学校すらいけない子がいる。心を病んでいて、クッキングハウスがありますが、それすらできない人がいることを考えることができました」(上村さん)

松崎さんは最後に「集まるということは素晴らしいことですね。安心して感想が言える場は得難いです。ここでは日々の生活の中で聞いてくれる人がいて、安心してしゃべることができる、その蓄積で安心できるのではないでしょうか。夜間中学とクッキングハウスは似ていますね。心の問題は目に見えません。見ようとしなければ見えないのです。そのような修行を、クッキングハウスでやっているのではないでしょうか」と語ってくれました。
会場のクッキングスターは、30名を超えるメンバーやスタッフ、実習生でいっぱいでした。「この賞は、スタッフ、非常勤スタッフ、ボランティア、メンバーの皆さんがいてくれたからいただけたのです」と松浦さん。メンバーの柳川さんの堂々とした乾杯の音頭。一人ひとりからのメッセージはどれも、居場所の大切さや35年の積み重ねを感じる心打つものでした。「私はクッキングハウスに来る前は、お風呂にも入れない状態でした。クッキングハウスに出会い、人生が好転していきました。松浦さんの笑顔に、何度も助けられました。作業所がなかった時代に、精神障がい者の居場所をつくった先駆者。調布市と言わず、日本で表彰されてもいいのではないかと思います」と祥子さん。「渋谷の書店で『わたしも一人で暮らせる』と出会い、クッキングハウスを訪ねたのが始まりです。いつ来ても開かれていて、地域での暮らしを支え、市民とオープンで学ぶことができているのがすばらしいと思いました。メンバーだけでなく、私たち非常勤スタッフ、ボランティアにとっても心の居場所になっています」と山田さん。
会計の野口さんから花束の贈呈、メンバーの中島さんの締めと続き、最後は35周年の舞台のフィナーレで歌う予定の「花たちよ」を、お祝いと感謝の気持ちを込めて歌いました。                                                          (井出歩)







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