ホーム > 心の居場所(2009年10月号)

    〜世界の仲間たちへ〜
当事者会「夢tomo」 誕生物語
未来に向かって、共に、友として
tomorrow, together, friends

気候の不順な夏も過ぎ、秋の実りを味わう季節となりました。皆さま、お元気でいらっしゃいますか。
 市民の底力を発揮すれば、「私たちが主権者」の政治に変えることができると、希望をもてた総選挙。障害者自立支援法を廃案にするのも、可能になりそうです。
 嬉しいお知らせです。初めての当事者ガイドブックを、クッキングハウスの当事者会“夢tomo”の仲間の手で出版できることになったのです。出版日は11月20日、「精神障害者リハビリテーション学会in福島」開催に合わせてです。
 「えっ、クッキングハウスが危機なの?」「このことは、スタッフだけで何とかしようと考える問題ではないです。私たちにとって、心の居場所がなくては地域で安心して暮らしていけないから、一緒に考えましょう」と、メンバーたちが真剣な表情で集まってくれた将来を考える会。毎回たくさん集まってくれて、それぞれの夢を思うままに伸び伸びと語ってくれたお陰で、少しも深刻になることなくいつも笑いにあふれていた将来を考える会。どんなに横道にそれる話が飛び出しても、いつの間にかまた本来の道に戻ってくる話し合い。ゆうきファームの本物のりんごジュースを飲みながらの、語り合うプロセスがどんなに楽しかったか!このプロセスこそが、かけがえのない、共に生きることの幸せをかみしめる時間でした。
ひとりで、孤立して考えているよりも、みんなで知恵を出し合ったらこんなにいっぱいのアイデアが集まり、しかも元気になれるのです。新しい何かが生まれてきそうな気配がしてきました。
そして、「危機こそチャンスに変えよう」の通り、6つの夢プロジェクトが生まれました。当事者会を作りたいという夢も、プロジェクトの中に入ったのです。
1987年に小さな心の居場所、クッキングハウスを12畳のワンルームを借りてスタートした時から、いつか当事者の自立センターになっていくようにと願っていたことが、とうとう22年たった今、実現したのです。あの頃はまだ、精神衛生法という古い法律が長期入院を認めていて、「社会復帰」という条文すらなかったのです。地域で一緒に暮らしたいと願うソーシャルワーカーが病院を飛び出して、自ら居場所を開くしかなかったのでした。願い続け、実践し続けていれば、夢を叶えることができるのです。
当事者会のネーミングも、いっぱい語り合って“夢tomo”でみんな納得。それからは、理念作りの語り合いが続きました。
「未来」って、どんな未来のこと?
「共に」って、誰と何を共有しあっていくの?
「友だち」は、それぞれが自立しながらも、支え合える関係を捜していきたいね。
当事者会“夢tomo”の主権者がいつも「私たち」であるために、大事だと思うことをいっぱい語り合って、理念を作っていこう。理念は、憲法のようなもの。お互いが、平和な関係でいられるために、自分たちの共通の考えをしっかりと適切な言葉で書いていこう。そして、理念は世界の仲間たちにも伝えていけるように英語版も作ろうと、スタッフもパートナーシップで一緒に考えてきました。
とうとう、理念が前文と3つの柱でできあがったのです。一人ひとりの願いがすべて込められています。とてもあたたかい言葉で、そして誰にでもわかりやすく、すべての当事者を仲間として包み込む優しさに満ちています。この理念があれば、迷った時、あるいは会が横暴になりそうな時、元に戻れます。こんな理念ができたことが、小さな居場所をやり続けてきた私たちの誇りです。
「夢tomo誕生物語」は、夢tomoブックのパート1です。光り輝く子として誕生した“夢tomo”が、これからどんな成長をしていくのでしょう。 “夢tomo”誕生に乾杯!!(松浦幸子)