ホーム > 心の居場所(2023年12月号)
心の居場所の原点 ~自由でありたい~

心の居場所の原点 ~自由でありたい~
厳しかった夏を乗り切り、秋になったと思ったらもう年末に。
なんと月日の経つのは早いことでしょう。
皆様、お元気でいらっしゃいますか。
クッキングハウスは、この10月で36周年。
心の居場所を何のために開き、何を実現したいと懸命に歩いてきたのか、37年目に入った節目に振り返りたいと思います。
私は1948年(昭和23年)に、雪深い新潟の村で生まれました。「世界人権宣言」の出された年でした。
「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利とについて平等である」。
そして私の生まれる前には日本国憲法が公布されました。もう戦争はしない。世界の恒久の平和の達成のために日本は努力することを誓ったのです。
第11条「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」とすべての人が人間として扱われる権利があること、人間らしく生きる権利があることを憲法で明記したのです。
1946年(昭和21年11月3日)公布、1947年(昭和22年5月3日)施行。
しかし、そんなことは全く知らず、学校で教えられることもなく小さな村の閉鎖的な家庭の人間関係の中で育ちながら、心が苦しくてずっと自由になりたいと求め続けて、18歳で上京しました。
働きながら夜間大学に通う青春時代。ようやく自由を獲得したのでした。
それなのに30代、YWCAの社会福祉科で学び、精神科病院の実習に入った時、心の病気をしたことだけの事情で、閉鎖的な病棟の中で何年も暮らさざるを得ず、人生をあきらめてうつむいている患者さんに出会ってしまったのです。
こんなに高度経済成長し繁栄しているかに見える日本の中に、束縛され自由になれないでいる人達がいるのだ。
しかも忘れられたように。
強い衝撃で私の心は揺れ、私の正義感も怒りでいっぱいになりました。知ってしまった以上、逃げることは出来ない。
私だけが自由であっても嬉しくはない。一緒に自由になりたい。
この街の中で共に暮らせるための拠点になる居場所をつくろう。おいしいご飯をつくって食べよう。
そこから気持ちのいいコミュニケーションがうまれ、心優しい福祉文化をつくっていけるだろう。
1987年10月、39歳で始めた心の居場所「クッキングハウス」でした。人間らしく幸せに生きられる自由をひたすら求め続けた活動でした。
今、37年目の歴史をみんなと歩いています。
(松浦幸子)